SDGsなプロジェクト

九州の企業が取り組むSDGsプロジェクト

産業のゴミをコントロールしながら脱炭素社会の実現を。産業廃棄物管理のDXがもたらす未来像。

Last Update | 2022.01.27

株式会社グリーナー

株式会社グリーナー
住所:北九州市若松区中川町3-2
TEL:093-771-8240
http://www.greener.co.jp

  • エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 住み続けられるまちづくりを
  • つくる責任つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を
  • 海の豊かさを守ろう
  • 陸の豊かさも守ろう
  • パートナーシップで目標を達成しよう

SDGs推進におけるDXの重要性

 近年、企業経営において、SDGsと同じくらい重要視されているキーワードにDX (Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション) が挙げられる。経済産業省が作成した『デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン (DX推進ガイドライン) 』では、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されている。DXという言葉が市民権を得るにつれ“単なるIT化やIT導入”の意味で使われているシーンが散見されるようになってきたが、DXは「製品・サービスやビジネスモデルを変革する」ことで、その手段としてのデジタル技術の導入 = IT化なので、DXの推進に際しては「何をどのように変革したいのか? 」というビジョンを設定・共有することが重要である。加えて、国が定めた『SDGsアクションプラン2021』の重点事項には「よりよい復興に向けたビジネスとイノベーションを通じた成長戦略」が掲げられ、達成のための施策の一つに「デジタルトランスフォーメーションの推進」が挙げられている。つまり、SDGsの推進にはDXによってもたらされるイノベーションが不可欠で、そのためにビジネスのさまざまなシーンでIT化が進んでいると俯瞰することができる。
 今回ご紹介する株式会社グリーナーは、企業の廃棄物処理・管理のDXを通じて地域のSDGsの達成に貢献する企業。若戸大橋からほど近い若松の商店街の一角に本社を構え、今日的な社会課題解決を通じて企業価値を高めている。企業の廃棄物処理・管理のDXにより、どんなイノベーションが起こり、どのような社会を展望しているのだろうか?

株式会社グリーナー本社は商店街の中にある緑の壁 (中央) が目印

 株式会社グリーナーは、2010年創業、社員数は20数名という環境系ITベンチャー。同社が開発した産業廃棄物の適正処理を管理するシステム「ecope (エコープ) 」は、全国で3,000拠点以上の排出現場で導入されていて、業界の注目を集めている。「廃棄物処理業界はアナログな部分が多いのでシステム化できる所が山ほどあるんです」と語るのは株式会社グリーナー 代表取締役 三根進也さん。「『ecope』には3つの特徴があって、①トレーサビリティ ②DX ③担当者の省力化です。①のトレーサビリティは、廃棄物がどの収集業社、どの中間処分業社によって適正に処理されているかどうかを簡単に把握できること。②のDXは、廃棄物の処理・管理にはその過程でたくさんの書類 (マニフェスト、契約書、許可証など) のやりとりが発生しますが、それをオンラインで一括管理できること。 ③の担当者の省力化は、廃棄に携わるすべての事業者が『ecope』という共通のプラットフォームを利用することで、担当者の業務を簡素化できることです。そもそも廃掃法 (廃棄物の処理及び清掃に関する法律) の定めでは、ゴミを出す人の責任、いわゆる排出者責任がとても大きくて、産業廃棄物を出す排出企業が、その廃棄物の性質や量に応じて収集や処理が適正に行われるように仕組みを作って継続的に管理しなければなりません。仮に廃棄を委託している業者が法令違反したら、その業者に依頼した排出企業の責任が問われるのです。 なので、排出企業の担当者は、自社の廃棄物の種類に応じて収集業社や中間処分業社 (以下、処理業者) を選定し、廃棄の段取りをし、それぞれに連絡をとりながら書類の作成や手続きを行うー そりゃあ大変ですよ」と三根さんは言う。たとえば、排出企業のA社が「ecope」を導入した場合、それまでA社の廃棄物処理業務で取引のある処理業者にも「ecope」を案内するそうだ。「『ecope』はプラットフォームなので、排出企業や処理業者など関係する事業者のすべてが利用することで価値が生まれます。(産業廃棄物の管理では) 排出者責任が大きいので、処理業者も『ecope』導入しなければこれまでの受注を失うことになり、わりとすんなりご理解をいただけていますし、もちろん処理業者の方々にとってもメリットの大きなシステムなんです。また、現状でお取引のある処理業者さんで、排出企業の要望に応えることが難しい場合は、僕たちが新しい処理業者をご紹介することもあります。そうやって廃棄に関わる企業が全体で価値を共有できるように努めています」。SDGsやDXというキーワードが市民権を得た現在では、産業廃棄物の適正処理をITで管理するシステムは、むしろ“なぜ、今までなかったの? ”と思われるほど、その価値を容易に理解できる。

株式会社グリーナー 代表取締役 三根進也さん

 しかし株式会社グリーナーは、2010年創業。当時は、現在とは社会の風潮は異なり、もちろんSDGsという言葉すら存在していない。「創業当時は、確かに大変でした。『ゴミを処理するのに (新しいシステムを導入して) 余計にお金をかけるなんてどういうこと? 』って言われるのが当たり前でした。世の中にはいろんなサービスがありますが『コストが安くなります』っていうサービスが多くないですか? 一方で『ecope』は新しく費用がかかるサービスで、単なるコストメリットだけで営業するのは難しい。けれども企業の廃棄に関する本質を改善するサービスなんです。法令遵守だったり、社内の業務効率化だったり、産業廃棄物を排出する企業の責任を全うするためのサービスです。そこをご理解いただける企業の方々から少しずつ導入していただき、地元の企業の方々に育てられ、地域の規模の大きな企業、国内の大企業へと、次第にお付き合いさせていただく範囲が広がってきました。特に最近は、企業がSDGsへの取組みを強く意識し始めた影響で、最初はご案内しても空振りだった企業さんから改めてお問い合わせをいただくケースも増えてきて、中小企業にとっては、かつては『安く廃棄したい』だったのが、今や『安く捨てるだけではダメ』という風に意識が変わってきています」と三根さんは語ってくれた。

モノづくり企業としての使命と責任

 では、実際の現場はどうだろう? 株式会社グリーナーと協業して産業廃棄物の適正処理を管理する企業に伺うことにする。一つめは渡辺鉄工株式会社の事例。1886年 (明治19) 創業、135年続く福岡を代表するモノづくり企業だ。おもに製造現場で使われる工作機械等をクライアントの要望に応じて設計・製作・据付しており、たとえば軽トラックや商用車などに使われているスチールホイールは、国内の80%以上は渡辺鉄工製の工作機械で造り出されているそうだ。また第二次世界大戦末期にアメリカ軍のB-29迎撃用に開発された前翼型戦闘機「震電」の設計・製造に携わっていたというユニークな歴史も持っている。
 「弊社はモノづくり企業なので、鉄やアルミ、真鍮などの鋼材はもちろん、廃油、廃シンナー、切削油水など多種多様な廃棄物が出ます。以前は、その廃棄物の種類に合わせて、いろいろな処理業者さんと個別にやりとりしていたんですが、グリーナーさんとご一緒することで一元管理ができるようになりました。そこが一番大きいですね。今やほとんど“グリーナーさんにお任せ”です」と笑うのは、渡辺鉄工株式会社 総務部 総務課 林 真吾さん。「僕自身の手間が大幅に減ったのも大きいんですが、廃棄を委託する処理業者さんをご紹介いただけるんですね。いろいろな処理業者さんとお付き合いをしていくと『ここは安すぎるけど大丈夫かな? 』とか『ここは費用が高すぎるんじゃないだろうか? 』など、不安材料が出てくるんですが、僕たちにはその判断基準のノウハウが少ないので、どう対処するかが難しい場合があるんです。グリーナーさんに相談すると、信頼できる処理業者さんをご紹介いただけるし、価格も納得感のあるものを提示してもらえます。安心安全な廃棄の仕組みを作ることができるんです」とのこと。

渡辺鉄工株式会社 総務部 総務課 林 真吾さん

 渡辺鉄工株式会社を担当する株式会社グリーナー 営業部 吉原啓介さんは「まず初めに、紙のマニュフェストを止めるところから取り組みました。渡辺鉄工さんが社内でDXを推進されていたので、お話も進めやすく、電子マニュフェストの導入から始めて、処理業者さんとやりとりする請求書も電子化して、これも紙の削減ですよね。渡辺鉄工さんは、元々廃棄物をできるだけ削減して、正しく処理することに真剣に取り組んでいらっしゃいました。廃棄物を処理した後の状態、『それは燃やせばいいよ』ってわけでなく、できるかぎりリサイクルしたいと考えていらっしゃって、廃棄にかかるコストも“安ければ安いほど良い”というよりは『きちんと正しく処理するためにはこれくらいかかります』という適正価格を重視されます。小さい部分ができなければ大きな部分ができないという姿勢で、産業廃棄物の管理についても、ずっと先の将来を見ながら今できることをやるという、そのあたりの姿勢はさすが100年企業だなと、僕も学ぶところが大きいんです」と語る。

株式会社グリーナー 営業部 吉原啓介さん

 「ウチの工場で出た廃棄物は、できるだけ出さない、出すならしっかり処理する。それが製造業の使命です」と林さんは言う。渡辺鉄工の“廃棄を出さない”努力も実は相当なもので、製造行程において、どの行程がどのくらい手間がかかっているかを、工作機械の稼働時間などから把握して、機械の稼働時間が長いのは手間がかかっている証拠なので、その無駄を無くすために設計そのものを変更するという改善を日常的に行なっているのだそう。「たとえば、ココを5mm削っていたのを2mmでいけるような設計に変えると3mm分の廃棄が減ります。機械の稼働時間を削減するには、それが人的要因なのか、設計的な問題なのかを判断して対策をします。廃棄するってことは、材料を買ったけど無駄にしているってことなんで、いかにロスを少なくしてモノづくりをするか、常に考えています」と語る。
 そんな中、最近新しい気付きがあったそうだ。「学生さんから問い合わせがきて『スチールやアルミ、銅、真鍮とかを見せてもらえないでしょうか? 』って言うんです。『見るのはいいけど、それどうするの? 』っと訊くと、それらの廃棄材を自分でアレンジしてアクセサリーを作ってみたいって言うんです。へぇ〜そんなこと考えるコがいるんだって、びっくりしました。実際に来社されてスクラップを見たりして『ぜひ、こういうのを使って試してみたい』って、持って帰られました。ウチにとっては廃棄物ですが、そういうふうに使ってもらえると僕たちも嬉しいんですね。廃棄材のリサイクルではなく、アップサイクルの取組みにも何か新しい可能性を感じています」と林さんは嬉しそうに教えてくれた。

  • 本社内にある廃油、切削油水などのストックヤード
  • 国内のスチールホイールの80%以上が渡辺鉄工由来とのこと
  • 形状が特異な前翼型戦闘機「震電」
  • 渡辺鉄工株式会社 本社

性格の異なる複数の現場を一元管理するために

 続いて、二つめは株式会社九建の事例。1953年 (昭和28) 創業、九州電力グループに属し、九州各地の送電線の建設・補修工事や送電線の保全業務を担う企業だ。今回伺ったのは佐賀県武雄地区に合計11基の架空送電線 (山岳地帯などに鉄塔を建て架線する) 工事の現場。「僕が経験した中では一番規模の大きな現場です。2020年10月から始まって2023年完成予定なので、3年間の工期になりますね」と言うのは株式会社九建 架空線工事部 小林祐太さん。

今回伺った武雄地区の現場の様子 (写真は九建 提供)

 「 (グリーナーさんの) 電子マニフェストのシステムを導入して、産業廃棄物の管理はずいぶんと楽になりました。紙でのやりとりは煩雑で、保管のためのファイリングや処理業者さんの許可証の期限チェックなど大変な作業だったのですが、ぜんぶオンライン上で一括管理できるのはずいぶんと助かります」と言う小林さん。この武雄の現場で出る廃棄物はコンクリートがらや廃プラスチックといった建設現場では一般的なもので、産廃処理業者等も数社で対応できるそうだ。
 「九建さんのメリットは、むしろ本社での管理業務にあります」と言うのは株式会社九建を担当する株式会社グリーナー 営業部 田村一道さん。「この武雄の現場は、工期が3年と比較的長い、架空送電線の工事現場なんですが、九建さん全体で見ると、さまざまな現場が同時に動いているわけです。工期が短い現場や離島の現場、地中送電線 (地中に電力ケーブルを敷設する) 工事の現場だったり、事情が違う現場があります。それぞれの現場に応じた産業廃棄物の管理が行われていて、それを本社で一元管理するとき、従来の紙ベースでのやりとりは大きな負担になっていました。それが『ecope』という共通のプラットフォームで統合されることで、行政に提出する書類の作成や産廃処理業者等の許可証の期限チェックなど、非常に省力化できます。実は、弊社のクライアントの中で、『ecope』を操作するための個人IDを一番数多く発行しているのが九建さんなんです。それだけ現場が多いということです。そういった部分をメリットに感じていただいて、弊社と協業していただいています」。

株式会社九建 架空線工事部 小林祐太さん

 さらに田村さんは続ける。「九建さんは、やはり九州電力グループの一員であり、社会インフラを作り上げてきた企業なので、産業廃棄物の処理に関してはプロフェッショナルです。コンプライアンスはもちろん、全体として非常に質の高い廃棄管理をされています。ですから、僕たちの役割は、さらに省力化できないか? もっと環境負荷を低減できないか? そんなことをテーマにしています。たとえば、現在は個々の現場で行われている産業廃棄物の収集作業を、近隣の現場や事業所を巡ってルート収集できるようにならないだろうか? 廃棄物の種類も多岐に渡るし、そのために整備しなければならない事柄も多いのですが、ルート収集によって、車両コストの削減がもちろん、CO2削減にも繋がります。ぜひそういうチャレンジを進めて、脱炭素社会の実現に少しでも役に立てるようにと思います」。

株式会社グリーナー 営業部 田村一道さん
  • 産業廃棄物の管理を現場のPCを使って行う小林さん
  • 現場に掲げられた「安全第一」の旗
  • 九建の産業廃棄物回収の様子
  • 九建の武雄の現場の様子

産業のゴミをコントロールできればまちづくりができる

 「本当にやりたいのは、この先なんですよね」と三根さんは言う。「『ecope』をはじめ弊社のサービスを選んでいただけたら、そこからがスタートなんです。要するにゴミの決算書が見られるんですよ。何をどのようにどのくらい捨てているのかデータがわかる。たとえば無駄な投資をして結局捨てているものはないか? データをとって、そこから工夫して、CO2の削減に取り組んだり、リサイクルを進めたり、アップサイクルにチャレンジしたり、ゴミをコントロールして、クライアントと一緒に未来を作るのが、私たちの本当にやりたいことなんです」。

さらにそれは企業ごとだけでなく、地域ごとにも展開ができるそうだ。「この地域には、どういう産業があって、だったらどういうゴミがどのくらいの量出るのか? きちんとデータをとると、たとえばこの地域にはどれくらいの規模の焼却処分場を作ればいいかが提案できるし、いやむしろ生ゴミ処理場が必要なんじゃないかとか、ゴミの処分で使っているハード部分の買い替え時期なんかに、施設のアップデートをジャストな規模で提案できるんです」。企業の廃棄物処理・管理のDXは、排出企業や処理業者の省力化だけに止まらず、蓄積したデータを共通のプラットホームで共有することで、まちづくりにまで展開できる。これが株式会社グリーナーの真価である。三根さんは言う「最近よく言われる『脱炭素社会への道』は、そこに行くためには細かい取組みの積み重ねが必要です。一足飛びにそこには行けないですよ。だから、僕らは産業のゴミをコントロールすることで脱炭素のまちづくりに貢献したいと思います」。