SDGsなプロジェクト

九州の企業が取り組むSDGsプロジェクト

まずはやってみる。だから気付いた 拓けた。外国人正社員と一緒に創る未来図

Last Update | 2020.05.21

油機エンジニアリング株式会社

油機エンジニアリング株式会社 本社・工場
住所:福岡県太宰府市大字北谷1096-8
TEL:092-920-5501
http://www.yukieng.co.jp

  • 働きがいも経済成長も
  • 人や国の不平等をなくそう
  • つくる責任つかう責任
  • パートナーシップで目標を達成しよう

従業員の約20%が外国人正社員

 少子高齢化にともなう人口減少は、国内の大きな社会課題としてさまざまな影響を及ぼしている。1997年をピークに日本の生産年齢人口は減り続け、九州・福岡の中小企業の多くは、優秀な人材の確保に苦労をしている状態が続いている。そんな課題を、外国人留学生を積極的に正社員として迎え入れることで解決し、事業拡大へと結びつけた企業がある。

  • 油機エンジニアリング株式会社 本社・工場
  • 敷地内には多種多様な建設機械が並ぶ

 太宰府市に本社を置く油機エンジニアリング株式会社。1995年創業で、建設機械と油圧ショベルのアタッチメントのレンタル・販売・修理などを行っているが、従業員52名のうち11名、20%近くが外国人正社員で占められているのが特長だ(2020年3月末現在)。2014年4月に初めての外国人正社員を採用したことを契機に、社内の意識改革と好循環が進み、2018年3月には台湾・高雄に現地法人との合弁会社を設立、2020年1月にはグローバル人材に特化した有料職業紹介事業への参入を果たした。企業の人材確保を外国人に求める動きが本格化する中、いち早く経営戦略に実装して良い結果を生み出した、その現場をのぞいてみる。
 

最初はトップダウンの違和感から

 「新卒の(日本人)大学生を採用したかったのですが、なかなか難しかったので、外国人留学生を採用してみようか? というのが始まりです」と語るのは牧田尚起社長。当時は、新卒採用に苦戦していて、複数の合同企業説明会に参加しても採用につながらない日々。そこで、特別なノウハウも知識も無いまま、2014年春、2名の韓国人を新卒で採用した。

油機エンジニアリング株式会社 代表取締役社長 牧田尚起氏

 最初は、トップダウンで採用しているので、日本人正社員は正直ついてきてはいなかったとのこと。「まず、会社から外国人正社員に対して住宅手当を支給しました。彼らは、いわば、就労ビザ一本を頼りに、日本でがんばろう、この会社でがんばろうっていう、相当な覚悟でわが社を選んでくれているので、その覚悟に敬意を表す意味で、せめて住む場所くらいは…と住宅手当を出したんです。でも、なぜ外国人だけに…と、理解ができない日本人正社員がいたのは事実でした」。
 「有り難かったのは、外国人正社員の2人が一生懸命に、仕事に取り組んでくれたんです。住宅手当の支給が最初は理解できなくても、彼らの仕事ぶりを目の当たりにし、一緒に仕事をしていくうちに、自分たちが(外国人だからと)区別していたのがおかしいんだとわかってきたんです」。日本人正社員にとっては、外国人正社員の状況を自分のことに置き換えてみると、彼らの凄さが実感できるようになったようで、自分が外国に一人で行って、はたして彼らのように高い志を持って仕事に向き合えるのだろうか? と。彼らの覚悟を理解してくれる日本人正社員が増え、彼らの仲間ができて、彼らの仕事ぶりを見て、その情熱に影響を受けて自分の仕事を見直す日本人正社員がでてきた。そして外国人正社員と一緒に働くことが、あたりまえのことになっていった。
 

人材育成は外国人も日本人も同じ

 さらに好循環は続く。外国人正社員を受け入れることで、経営における大きな理念が見えてきた。「日本人と外国人との文化の違いはある。その違いを認めて、お互いに受け入れようという姿勢でやってきました」と言う牧田社長。その姿勢は、若手の育成手法に変化をもたらす。数年前までは、若手の育成といえば、技術自慢の企業らしく“仕事は見て覚えろ”方式だったとのこと。一方、外国人正社員の育成では、彼らとの違いを受け入れ、お互いに声を聞き、きちんとコミュニケーションして育成していくことでこそ成果が上がる。すると、それは日本人も同じではないか? という議論が生まれ、日本人正社員の若手の育成でも、コミュニケーションを重視し、先輩も後輩も一緒に成長していくスタイルに変わる。こうして社内で意識改革が起きる。人事評価制度が変わり、業績にも成果が表れ、給与面も福利厚生面も少しづつ良くなってきた。外国人正社員を採用してから、ここまでわずか5~6年での変化である。
 

違いを認めて、違いを受け入れる

 2020年度で入社3年目になるカウン・ミャッ・ミン・トゥさんはミャンマー出身で、福岡営業所に勤務している。「ミャンマーの建設現場では、日本のような重機をあまり使わず、人間が手作業でやっているので、現場での事故も多いです。 私はここで日本の技術を学んで母国で活かしたい。いずれミャンマーに帰って会社を立ち上げ、油機エンジニアリングのグループ会社として、日本とミャンマーとの良い関係づくりに貢献したいと思っています」と、明確な目標を見据えている。
 カウンさんの上司は福岡営業所の笠 育太郎所長。「(カウンは)福岡営業所としては、韓国・中国・米国に次いで4人目の外国人正社員です。母国に戻って会社を立ち上げるという目標を持っていますので、技術だけでなく、お客さまとの関係づくりや組織のマネジメント方法など、幅広い分野のことを学べるように、一緒にいろいろと取り組んでいます」と目標を共有しながら業務に就いている。

  • ミャンマー出身のカウン・ミャッ・ミン・トゥさん
  • 福岡営業所の笠 育太郎所長

 今でこそ、上司と部下がお互いに“どんな人材を目指すか”というゴールを具体的に共有できているのは、質の高いコミュニケーションの成果と言えるが、最初に外国人正社員をチームに迎えた時は、戸惑いしかなかったという。笠さんは「まず言葉の壁。さらに文化の違い。仕事に対する心構え。どうやって伝えたらいいのか、そもそも伝わるのか? と。でも、実際に一緒に仕事を始めると、日本語も堪能だし、一生懸命に仕事を学ぼうとする姿勢にこちらが気圧される場面も出てきて、彼らにどう応えるのか? 僕らのコミュニケーション能力が問われていると感じました。僕の若い頃は、仕事は先輩の技術を盗めと覚えてきたものですが、今は一緒に学ぼうとする雰囲気に変わりました」と言う。
 また、最初は日本式のノウハウを学んでもらい、ある種、日本的な型にはめることを意識して教えていたのが、彼らの国ではこういう手法や考え方があると、次第に意見の相違が生まれてきた。しかも、よく聞いてみると、なるほど! と気づかされる部分もある。もちろん、実情にそぐわないアイデアもあるが、日本人とは違う視点で硬直化した発想を壊してくれる。そんな経験の積み重ねが「お互いの違いを認めて、お互いに受け入れる」という、油機エンジニアリングの理念へと昇華されていくのである。

2人のコミュニケーションは日本語。お互いにメモを取りながら専門用語が飛び交う。

新規事業を立ち上げた外国人正社員

 2020年1月6日、油機エンジニアリングの新規事業である、グローバル人材と九州の中小企業とのマッチング事業「JOB MATE」が有料職業紹介事業所の許認可を得た。2014年から始まった外国人正社員登用により手に入れた人材と経験とノウハウを最大限に活かした、社会課題解決型事業への参入だ。
 JOB MATEは、3人の外国人正社員と牧田隆会長の4名がプロジェクトメンバーで、この3人がいずれも個性的で、異文化理解とコミュニケーション能力が高く、既存の事業領域を拡大できる、まさにグローバル人材そのもの。

  • 油機エンジニアリング株式会社 会長 牧田隆氏
  • JOB MATE 職業紹介責任者 鄭 爽さん
  • JOB MATE 職業紹介責任者 李 尚宰さん
  • JOB MATE アシスタント 赤木ジョーダンさん

 2014年春に、油機エンジニアリング初の外国人正社員として入社したのが李 尚宰(Lee Sangjae)さん。「僕は、韓国の高校で機械を学び、兵役でも機械を学び、韓国の大学では日本語を専攻していました。大学生の頃、福岡の放送局と韓国の放送局のインターンシッププログラムで『日本で就職したい韓国人と外国人を採用したい九州の企業』というテーマで、テレビ番組を作るというプロジェクトがあって、九州の企業を3社くらい取材していて、その1社が油機エンジニアリングだったんです。取材を通していろんな考えが聞けて、その印象が良くて、仕事の内容も僕の専攻に合ってて、油機エンジニアリングも外国人の採用を考えていて…それで」。まさに人と企業との「縁」を感じるエピソードだ。
 李さんに続いて、2016年春に入社したのが鄭 爽(Tei Sou)さん。「私は、たくさんの日本人の学生と一緒に、合同企業説明会に参加して、いわゆる普通の就職活動をしました。この業界のことは全然知らないし、建設機械のこととかレンタル業とか、わけがわからなくて(笑)。でも、実際に会社を見学してみると社員の皆さんの雰囲気も良くて、入社前に半年以上、月1~2回のインターンシップがあって、それで“この会社なら大丈夫!! ”と思って入社しました」。そんな彼女は、のちに自身の語学力を活かして、台湾での現地法人との合弁会社設立(2018年3月)に大きな役割を果たすことになる。
 入社2年目となる赤木ジョーダンさんは「2年間、山口と福岡で英語を教えていました。ずっと付き合っている彼女がいて、福岡で働きたいと考えていたところ、大学の友人が人材紹介会社を教えてくれて油機エンジニアリングに出会いました。インターンシップで、社内の雰囲気やボス(牧田会長や社長)の人柄が良かったので、決めました」。
 

「求職」も「求人」も経験済みという強み

 このように、かつて自分自身が外国人として九州・福岡で働きたいと「求職」し、入社後は外国人を採用したい「求人」側でさまざまな社内改革を実践してきた、この経験とノウハウこそがJOB MATEの強みと言える。「わが社も最初は手探りで外国人の正社員を迎え入れたのですが、採用してみたら、彼らのがんばりが社内の活性化につながって、社員の仕事に対する意識も変わったし、海外での展開もできるようになった。ウチにもできたんだから、九州の中小企業でできないはずはないと思います。彼ら3人が、自分たちの経験を活かして、この事業を立ち上げたいと言ってくれて、それはウチだからできる事業だと、社会的な意義がある事業だと考えて、JOB MATEを立ち上げました」と牧田会長はこの新しいチャレンジの意義を語る。
 全国の都道府県別にみると、福岡県には17,000人以上の外国人留学生が暮らし、東京、大阪に次ぐ全国3位の数であるにもかかわらず、県内の企業に就職しているのはわずか703人という状況(福岡県クールジャパン人材育成検討会資料より)は驚きの数字といえる。「海外から九州や福岡の大学に留学している優秀な外国人が、九州の会社に就職できないのが現実です。九州では、日本人の大学生を新卒採用できない企業は多いのに、一方で、日本語が堪能で優秀な留学生たちが、関東や関西に流れたり、自国に戻ったりしていて、九州で活躍できるチャンスが逃れている」と牧田会長は現状を分析する。

「やればできる」というマインドを

 「九州の企業は自信がなさすぎるんです」と鄭さんは言う。「優秀な外国人がウチみたいな会社を選んでくれるのか? とか。九州には、ほんとに技術があって質の高い中小企業がたくさんあるのに。ウチは外国人採用にきちんと対応ができていないって…いや、やればできますよ! 油機エンジニアリングだって、一見すると3Kに見える会社でも、こうして中国人、韓国人、アメリカ人の立派な社員が働いていますよって言いたいです。私たちは、そんな企業の皆さんに、大丈夫です! やればできますって伝えたいんです。外国人の在留資格は種類がたくさんあるので、まずは、企業が必要としている人材は何なのか? それにはどういう在留資格が必要なのか? その人材を雇用するにはどういう準備が必要か? それをきちんとご説明します。グローバル人材を受け入れるためのルールを知らない中小企業は多いですが、企業が知っておけばいいポイントは実は限られていて、専門的なことは専門家、つまり私たちに任せてください」。
 李さんも「まずはやってみるといいですよ」と続ける。「外国人正社員の採用で、どれだけ事前に準備して迎え入れても、辞める人はいます。それは日本人正社員でも同じです。まずは一歩踏み出さないと。試行錯誤しながらまずやってみる。JOB MATEはその支援ができます」。

 九州で働きたい留学生はたくさんいるのに、その受け皿がないという現状。その受け皿を育てる。そういう使命を感じていると牧田社長は語る。「JOB MATEは事業としては、外国人スタッフが直接グローバル人材をマッチングすることに特化していますが、人材育成は、日本人も外国人も区別する必要はないと思います。同じなので。受け入れる企業側に、外国人だから難しいという先入観があれば、我々が実例を通してその意識を変えていきます。日本人の離職率も高い現状で、外国人を採用して、たまたまその方が辞めたら“やっぱり外国人は難しい”ってことではなくで、それは、もしかすると会社の体質かもしれないし、日本人でも辞めていたかもしれません。そういうことではないと。外国人にはこれだけ優秀な人材がいて、覚悟を持ってきている人がいて、そういう人を見極めて採用することは、九州の中小企業でもできるんです」。そう語る牧田社長には、静かで穏やかな語り口の中に経験に裏付けられた確固たる自信があふれている。

  • グローバル人材紹介 JOB MATE
  • 住所:福岡市博多区博多駅前1-7-22 第14岡部ビル 10F 1003号室
  • TEL:092-260-1907
  • https://www.jobmatejp.com
  • 登録支援機関番号:20登-003925
  • 有料職業紹介事業許可番号:40-ユ-301045