SDGsなプロジェクト

九州の企業が取り組むSDGsプロジェクト

集中豪雨による洪水を防ぐためには残土処理が問題!? 建設コンサルタントが挑む今日的な公共事業とは。

Last Update | 2023.01.31

株式会社大功

株式会社大功
住所 : 福岡県飯塚市綱分579-6
TEL : 0948-80-1517
https://taikou-taikou.jimdofree.com

  • 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 住み続けられるまちづくりを
  • つくる責任つかう責任
  • 気候変動に具体的な対策を
  • パートナーシップで目標を達成しよう

災害復旧事業費の多くは豪雨災害に起因

 財務省福岡財務支局が2022年にまとめた「令和3年の災害復旧事業費の状況について」によると、福岡財務支局管内 (福岡・佐賀・長崎) において令和3年に発生した梅雨前線豪雨、台風等の自然災害により被災した河川、道路、農地、農業用施設等に係る災害復旧事業費は約280億円、3,225件にのぼる。過去10年の事業費の推移を見てみると、北部九州は大規模な豪雨災害に繰り返し襲われていることがわかり、その度に数百億円規模の復旧事業費を計上している。また、国土交通省が策定した災害復旧における標準的な復旧方法を示したガイドライン『美しい山河を守る災害復旧基本方針』によると、災害復旧には「河川等災害復旧事業 (単災) 」と「改良復旧事業等」に区分されている。「災害復旧」は原形復旧を基本とし、「改良復旧」は災害再発防止の視点を活かしてエリアの改修を行うものとされている。いずれの場合でも「多自然川づくり」の考え方に基づき、河川そのものだけでなく、流域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮した河川管理を行うことが求められている。つまり、単純な土木工事ではなく、複合的な視点を取り入れて、河川とその流域の暮らしや文化を復旧し、災害の再発を防ぐという、非常に難易度の高い事業成果が求められていると言える。

過去10年間の災害復旧事業費の推移 (財務省福岡財務支局)

 このように、災害復旧事業をはじめとする公共事業について、より複雑で高度な専門的知識が必要とされる中、建設コンサルタントという役割が重要度を増している。建設コンサルタントとは、社会インフラ全般に対して総合的にプロデュースやアドバイスをし、事業の発注者である国や地方自治体をサポートする役割のこと。具体的には、国や地方自治体 (発注者) のパートナーとして、事業の企画、計画、調査、設計、施工・維持管理など、事業の全般にわたって幅広い業務を担務しており、実際に施工に携わる個々の建設会社は、建設コンサルタントが行った設計に基づいて工事を行っているのが現状だ。今回ご紹介する株式会社大功 (以下、大功) は、飯塚市に本社を置く総合建設コンサルタント企業。一般的生活者にはなじみの薄い建設コンサルタントの仕事だが、大功の具体的な取組みを通じて、今日的に求められている公共事業について理解を深めてみよう。

プロフェッショナルを連携させることのできる“調整役”

 「総合建設コンサルタントというのは、公共事業の行政補助業務ということになるんですが、国や地方自治体が公共工事を発注する際に、建設的な専門家が間に入って、発注から竣工までをお手伝いする仕事です」と教えてくれるのは、株式会社大功 代表取締役 安岡広之さん。「ただ、それはあくまで大枠での理解なので、具体となると多岐に渡りますね。一般的な公共工事は4つのフェーズに分かれます。① 調査、② 設計、③ 施工、④ 維持・管理です。① 調査は、道路や河川に工事が必要かどうかを調査するもの。慢性的な渋滞に悩む道路とか氾濫の危険のある河川とか、その状況や状態を調査するものです。② 設計は、工事が必要な箇所をどのように変えていくかという考えの元、具体的な図面や計算書を作成するもの。③ 施工は、設計段階で描かれた工事後の効果をきちんと発揮できるような工事を実施できるように管理すること。④ 維持・管理は、施工後の効果を測定し、その効果が想定どおりの期間発揮できるようにすること。公共工事は、このサイクルが長いスパンで循環しているので、建設コンサルタントは、そのすべてを包含し、それぞれのフェーズに最適な人材を投下して、より良い効果を発揮できるようマネジメントする役割ということになります。工事の規模によりますが、弊社が直接受注する場合もありますし、社員を200〜300人抱えているような大規模なコンサルタント企業からの発注で、協業してプロジェクトにあたる場合もあります」。

株式会社大功 代表取締役 安岡広之さん

 安岡さんは続ける。「この4つのフェーズで言えば、弊社は③ 施工の分野が得意です。建設事業には『設計・施工分離の原則』というのがあって、実際に施工する建設業者と、我々のような建設コンサルタントは別なんですね。弊社が実際に施工するのではなく、施工と設計の齟齬を調整するのが弊社の役割となります。たとえば、実際に施工するにあたっては、机上での設計図面と比べて『この効果を得るには工程に不具合がある』とか『設計図面を変更した方が、より良い効果が得られる』など、より具体的に現場に入って初めて気付く部分というのがどうしても出てきます。その場合は、設計変更の協議が必要で、それは材料、工程、金額の変更など、① 調査、② 設計の技術力がないとできないんですね。だから弊社のように、③ 施工が得意だけれども、その前段階にも精通している総合建設コンサルタントが必要になるんです。建設現場はそれぞれの分野のプロフェッショナルの集まりで、自分の技術や経験にプライドを持った人材の集団です。だから、それぞれのプロフェッショナルをトータルで連携させることのできる“調整役”がとても大事で、総合建設コンサルタントは十分な経験がないと務まらない仕事です」。

公共事業はケース・バイ・ケース

 では、総合建設コンサルタントの仕事とは、具体的にどのような事例があるのだろうか? 「公共事業でも、単純に元に戻す工事もあれば、河川や道路に新しい役割を持たせて改修する工事もあって、本当にケース・バイ・ケースです。大きな視点で言えば、国内のほとんどのインフラは維持管理のフェーズになっています。新しく何かを造ることよりも、今あるものを補修・改修してその役割を果たせるようにする工事ですね。そこには非常に専門的な知識が必要とされるケースが多いので、建設コンサルタントの役割は重要度が増しています」と安岡さんは言う。「たとえば河川で言えば、10年前は流域に3万人規模の街があって、それが人口が増えて今や10万人規模になったとすると、流域の街の舗装面が増えて、大雨が降った時には雨水が土に染み込まずに河川への流入が増えます。しかも、近年のような短時間で一気に大量の雨が降るようになってくると、河川の維持管理の意味が変わってきました。河道 (河川の流水が流れ下る部分で、堤防または河岸と河床で囲まれた部分) はかつてはコンクリートで固めるのが主流でしたが、それだと川の流れが速くなるので、短時間の集中豪雨の際は、複数の支流が合流した先の河川では、一気に洪水が流入して河道内がパンクします。それで堤防を越えて水が溢れ出すわけで、最近では護岸をコンクリートではなく土で作ろうという考え方が増えています。つまり、工事の内容が、気候変動や流域の状況などで大きく変わるので、『どのような効果を得たいのか? 』ということで、まさに工事の企画段階からケース・バイ・ケースなんですね」。

 そんな中「多分、とてもウチらしい特徴的な仕事だと思います」と安岡さんが挙げてくれたのが「遠賀川河道掘削工事」の事例である。「2003年 (平成15) 7月に起きた飯塚の大出水 [註1] で、一晩で飯塚の街が浸水して大きな被害が出ました。これを受けて、遠賀川でさまざまな治水対策が取られることになりました。具体的には、老朽化が進んだ中間堰 [註2] の改築工事と、堰の改築とあわせて上下流の川底や両岸の掘削を行う河道掘削工事が2009年 (平成21) に始まりました。簡単に言えば、川底や両岸を掘削して河道を広げて氾濫を防ぐ工事で、そのコンサルタントを当社が担当することになりました。掘削自体はそれほど困難な工事ではないのですが、問題は、掘削した後に出る“土”をどうするか? という話なんです」。
 [註1] 2003年 (平成15) 7月19日未明の集中豪雨により,飯塚市・嘉穂郡穂波町全体で4,000戸を越える家屋等の浸水被害が発生した。
 [註2] 官営八幡製鉄所の取水のために遠賀川河口からおよそ11kmの地点に設置された堰。1929年 (昭和4) に建設された古い堰で、豪雨時には中間堰がボトルネックとなり水の流れを妨げていた。

掘削した大量の土をどうするのか?

 遠賀川は、その中上流部に嘉麻市や田川市、飯塚市、直方市といった主要都市が、下流部 には北九州市都市圏があり、流域各地に市街地が点在し流域人口は約64万人と言われている。一方で2003年 (平成15) 7月の大出水をはじめ、ここ数年で4回も大雨による甚大な浸水被害が発生している。そこで、2003年 (平成15) 7月洪水相当の豪雨でも安全に川の水を流下させることを目的に、河道の掘削工事などの整備が進められている。事業期間は2007年 (平成19) から概ね30年間が想定されている。
 「問題は掘削した土をどうするかなんです」と安岡さんは言う。「リサイクルするのが一番理想的ですが、なにせ1年間の工事で100,000立米 (m3) もの残土が出ます。一般的な公共事業で出る残土処理がだいたい500〜1,000立米 (m3) なので、要するにとんでもない量ということです。国が本気を出して工事をするということは、こういう規模なんですね (笑)。一般的な残土処理は、許可を得た場所 (残土処分場) でお金を払って処理します。土なので産業廃棄物ではないのですが、どこにでも置けるわけではないので処分できる場所も限られます。遠賀川の河道掘削工事の場合は規模が違うので、そんな大量の残土を処分できる場所もないし処分費も莫大になります。我々、建設コンサルタントの仕事は、もちろん、この残土をどうするか? を解決せねばなりません。そこで考え出したのが、土を必要としている公共工事とのマッチングでした」。

遠賀川 (写真はイメージ)
  • 遠賀川 (写真はイメージ)
  • 遠賀川 (写真はイメージ)
遠賀川 (写真はイメージ)

 「簡単に言うと、遠賀川の掘削工事で出た土を、土を必要としている他の公共事業に有効利用してもらうということです」と安岡さんは話を続ける。「公共事業同士で土をマッチングすることで、資源やコストを無駄にせず活用することができます。遠賀川の掘削工事で出た土は、具体的には、堤防の補強や工事用の仮設道路造りなど、国の公共事業で再利用する場合が多いのですが、それだけでは足りないので宅地造成などに利用したりもしています。規模の大きなもので言えば、遠賀町で実施されている『遠賀川駅南土地区画整理事業』などが挙げられます。JR遠賀川駅南の面積約27.7ヘクタールの地区を再開発して、住宅地や公園、商業施設などを造りにぎわいを創造する事業で、その土地の造成に再利用しています」。このように公共事業同士のマッチングが行えるのも、地域に根ざした建設コンサルタントならではの功績と言えるが、実は遠賀川のように、いくつもの公共事業同士をうまく組み合わせて土を有効利用するスキームが効果的に働いている事例は、九州では唯一の事例とのこと。そこには、概要を聞いただけでは分からない課題が数多くあるようだ。

現場を知っているからできる細やかな調整

 大功が手がける遠賀川の残土処理について、より詳しい現場の声を聞きたいとお願いすると、とある現場を紹介された。「近くに来たら連絡をください。案内します」と言われ現場に向かうと、そこは白い仮設の壁に囲まれたただの空き地。出迎えてくれたのは、株式会社大功 土木部 部長 畠井智裕さんと日本振興株式会社 技術課 課長 坂本宜宏さんなど、数名のスタッフの方々。「ここが、遠賀川で掘削した土を一時的に仮置きしておくストックヤードの一つです」と教えてくれる畠井さん。「ここではストックヤードに常駐し、遠賀川を掘削して出た土の管理や、出入りする工事用車両の調整、土砂の搬入・搬出の管理をしています。遠賀川は河川敷がそれほど広くなくて (掘削で出た) 土を置いておけないんですね。仮に置いておいたとしても、雨が降って流されると意味がない。それでこういった仮置きできるストックヤードを地域の市町村から提供いただいて、土が必要な公共工事が発生したら搬出するということをしています。ここ以外にも複数箇所、私たちが管理するストックヤードがありますよ」と畠井さんは言う。見れば、小高い丘に見えるのは、実は掘削された土が積まれたもので、一部には草が生えている部分もある。聞けば、古いもので2〜3年間ストックされているものもあるそうだ。「仮置きのストックヤードと言っても、掘削して持ってきた土が、都合よく再利用できるような公共事業がすぐに行われることは稀で、しかも川の底にあった土なんで、用途によってはその土の質を改良しないと再利用できない場合もあります。その (土の質の改良) 方法も、用途や量によって最適な方法を見出さねばなりません。ですから、皆さんが想像されるよりも長期間の仮置きと管理が必要です。それに、土の量も膨大なので、搬出入のダンプカーの管理一つとっても大変です。私たちは、その管理もしていますので、細かいところですが、かつては紙の半券を使ってアナログでダンプカーの管理をしていましたが、QRコードを使うシステムに改善して、デジタルでデータ管理できるようにしたりもしています」。

株式会社大功 土木部 部長 畠井智裕さん
  • ドローンを駆使する株式会社大功 設計・積算課 矢佐間勇さん
  • 設計を担当する株式会社大功 設計・積算課 課長 佐藤光樹さん
  • 日本振興株式会社 技術課 課長 坂本宜宏さん
  • 土の搬出入管理をデジタル化したシステム説明図

 「この事業は、国土交通省遠賀川河川事務所の発注で、弊社 日本振興株式会社が元請けしております。ただ事業の性質上、地元の情報に精通していて現場管理の得意な大功さんと協業しないと、仕事が進まないですね」と言う坂本さん。「公共事業のマッチングと言ってしまえば、簡単なんですが、じゃあ、こんな大量の土を必要とする公共事業が、どの自治体で行われようとしているのか? その情報を手に入れるのは容易ではありません。そのレベルの事業は何年も前から計画されるわけですから、その構想段階から情報を手に入れなければなりません。この仮置きのストックヤードだって、地域の自治体の方々から貸していただいているわけですから、つまりは、いかに日頃から、地域の自治体の方々と我々のような建設コンサルタントが細やかな関係性を作っているかが本当に大切なポイントなんです。だから大功さんの役割は大きいですし、九州では、唯一、この遠賀川だけが実現できていることなんです」と坂本さんは言う。「あくまで我々は事業の発注者である国や自治体の方々と一緒に調整して、より良い方法を提案する役割で、判断するのは発注者さんですから」と謙遜する畠井さんだが、こうして少し現場での話を聞くだけで、この「遠賀川の河道掘削工事」における大功の役割の重要度が垣間見える。

国が自治体に“土”を営業して回るという仕事

 「あくまで我々はより良い方法を提案する役割で、判断するのは発注者さんですから」と畠井さんが言うとおり、では判断をする発注者の視点から建設コンサルタントの役割について、さらに深めてみよう。お邪魔したのは国土交通省 九州地方整備局 筑後川河川事務所 管理課 専門職 津田久則さん。「 (大功の) 安岡さんとは、もう長い付き合いですよ。今は異動で筑後川河川事務所にいますが、前は遠賀川河川事務所で、それこそ遠賀川の土をどうしようかって、一緒に悩んで今の仕組みを作ってきましたから」と津田さんは笑う。「河川管理の仕事は、やはり少しづつニュアンスが変化してきていて、国が管理する河川の管理だけでは洪水は防げなくなっているんです。実際、久留米地区は4年連続で水害に遭ってますが、これはいわゆる河川の氾濫ではなくて内水氾濫 [註3] なんですよね。降った雨がはけきれてない状況です。それは川の堤防を高くして氾濫を防ぐだけでは解決できなくて、下水道の整備とか側溝の整備とか、流域全体で対応しなければなりません。『流域治水』という言葉がありますが、流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行う考え方です。山の保水能力を高める、そこから流れる川の治水、最近では田んぼダム [註4] なんてのもあります。いろんな施策を組み合わせてやる必要があります。だから、我々の仕事も、その範囲が拡がったというよりも協力する相手が増えたという感覚ですね」と津田さんは教えてくれる。
 [註3] 市街地に降った雨が河川などに排水されずに、下水道や水路から溢れて道路などが浸水すること。
 [註4] 田んぼの水を貯める機能を利用し、大雨の際に一時的に田んぼに水を貯め、ゆっくりと排水することで洪水被害を軽減しようという取組み。

国土交通省 九州地方整備局 筑後川河川事務所 管理課 専門職 津田久則さん

 そんな津田さんにとって、大功の安岡さんは、共に課題解決に奔走した心強い協力者のようだ。「遠賀川は、堤防がある程度整備されているので、さらに治水となると河道の掘削という手法になるんです。当然、工事の仕様書には残土の処理について言及はしていたんですが、大雑把というか細かく規定をしていなかったんですね。それで、いざ工事が始まると、現場で残土の持って行き場に困ってしまったわけです。量もかなりなもので、それが定期的に排出されるわけですから、それを全部お金をかけて処理するわけにはいかない。建設コンサルタントさんって、私たちと同じ目的を共有してお互いに知恵を出し合う関係なので、安岡さんと2人で『さて、どうしようか? 』ってなって、導き出したのが“公共事業の土のマッチング”だったんです」と津田さんは振り返る。「最初の頃は、それこそ2人で地域の自治体に出向いて『土を使う新しい造成事業のご予定はないですか? 』って聞いて回ってましたよ。遠賀川からは毎年一定量の土が出続けますが、一定の量の土を使ってくれる自治体の事業なんて、そんなに都合よく出たりはしませんし (笑) 、それに遠賀川の土と言っても、サラサラの砂もあれば柔らかい粘土もあるし、その事業に合った土を用意しなきゃなりません。ってことは、掘削した土を仮置きできるストックヤードも確保しなければならないし、その管理もしなきゃならない。具体的に土を使ってくれる現場が、ものすごく遠い場所だと運送費だけで莫大になるし…と、もう調整ごとばかりで、かなり大変でした。一般的に自治体の土地造成事業などは、計画段階から自治体の担当者とコミュニケーションを取って、土のやりとりの全体像をデザインしていかないと、無駄な費用がかさんだり非効率的な運用になったり、もちろん土の処分にかかる費用も公金なので、できるだけコストは抑えて効果をあげなきゃなりません。そういう部分でも、安岡さんと一緒に、徐々に仕組みを作っていけたのは助かりました。仕組みがうまく回るまで4〜5年かかりましたかね。言わば『国が自治体に“土”の営業に回ってるもの』みたいなことでしたから」と津田さんは笑う。

 「こういう残土処理の話は昔からの課題ではあるんです。残土を処分するために谷を埋め、一方で土地造成のために山を削っていて、マッチングできれば無駄な費用もかからないし、自然の持つ防災機能を損ねることもない。一方で、タイミングが合わない、土の質が合わない、費用が合わないなど、いろいろな課題があるのも事実なんです。いわゆる足で稼がないといけない手間のかかる仕事です。遠賀川の事例は、九州では唯一の残土マッチングの成功例なんです。つまり、これは新しいコンサルタント事業の分野と言えるんですね。しかも公共工事なので、発注者は人事異動で担当者が変わる。それでも仕組みを維持していけるように、安岡さんのようなコンサルタントが必要なんです」と語る津田さんが印象的だ。
 このやりとりを側で静かに聞いていた安岡さんに尋ねてみた。ーよく、こんなこと実現できましたね? 「情報を手に入れるのは足で稼がなきゃなりませんが、あっちの事情とこっちの事情を結びつけるには“センス”が必要です。センスって言うのは、思いつきとかひらめきとかではなくて、やっぱり経験と知識なんだと思います。私たちも、もっと建設コンサルタントの可能性を広げられるように力を尽くしていきます」。

国土交通省 九州地方整備局 筑後川河川事務所