colaboraレポート
九州の地方創生SDGs注目の話題
【第1回】SDGsとは、SDGs経営とは。
SDGsの基礎知識① 九州経済調査協会
公益財団法人 九州経済調査協会
住所 : 福岡市中央区渡辺通2-1-82 電気ビル共創館5F
TEL : 092-721-4900
http://www.kerc.or.jp/index.html
NCBと九州経済調査協会との協働でお届けする連載企画「SDGsの基礎知識」。どのようにSDGsを経営戦略に実装して、企業価値を高めるのか? その基本的な考え方や知識についてオリジナルレポートでお届けします。
SDGsとは:2030年までに達成したい17の目標
SDGsとは、Sustainable Development Goals 「持続可能な開発目標」の略です。2015年の国連サミットで、世界の「持続可能な開発」のために2030年までに達成したい目標として決められました。
SDGsの目標は17あります。例えば、貧しい人や栄養が足りない人がいなくなる、健康で長生きできる、より質の高い教育が受けられる、差別がなく平等が守られる、海や森を守る、などに関わるものです。これらの目標は各国の政府機関だけではなく、企業や大学、市民などの様々な人の声を集めてまとめられました。目標達成のために、一人ひとりがSDGsを理解し、目標の達成に向けて行動することも求められています。
なぜ、一人ひとりが行動を起こすことが求められているのでしょうか。ここではまず、SDGsが作られた経緯やその目指していること、その特徴、企業がSDGsに取り組む「SDGs経営」が注目されている理由を知ることから始めたいと思います。
SDGsが作られた背景と目指していること
SDGsが作られる前、世界では2000年から2015年にかけて、開発途上国を中心に貧困や教育、健康や環境に関する問題を解決するための目標を掲げて取り組んでおり、先進国もその支援をしていました。取組みの結果、一定の成果は出ましたが解決できずに残った問題もありました。また取組みの中で、先進国の行動が原因となる問題があることや、開発途上国だけでなく先進国の中でも問題となっているものも明らかになりました。
これらの経験を踏まえて、先進国も開発途上国も一緒になって各国·地域の問題について協力して取り組むための新たな目標が必要だとされ、SDGsが作られました。
SDGsの特徴
世界のこれまでの経験からSDGsは5つの特徴を持っています。
全世界で取り組むこと、誰一人取り残さないこと (leave no one behind) 、積極的に参加すること、社会・環境を守りながら経済発展をすること、そして、成果を確認しながら取り組むことです。
SDGsが示す「持続可能な開発」とは、今見えている問題のみに目を向けて対応するのではなく、未来にわたって問題なく安心して暮らし続けられるように生活をよくしていくことです。
そのためには、経済と環境、社会制度のバランスをとりながら、問題の原因に対する根本的な解決策を考え、対応していく必要があります。なぜなら、SDGsの17の目標一つひとつは、他の目標を達成することとも関係しているためです。
たとえば、SDGsゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」に対する活動を進めていくと、ゴール1「貧困をなくそう」の解決にもつながります。一部の国では、女性が銀行口座を持てず、ある地域では特定の仕事への就業が許されていません。家庭の中でも女性は男性よりも病人·高齢者·子どもの世話などの仕事に無給で従事していると言われています。これらは、賃金格差の原因につながります。また、政治・経済の会議の場で意見を述べる立場にある女性が少ないと女性のニーズが取り残され、格差につながります。このように、ジェンダーの不平等が原因となる貧困は男性よりも女性に多くあてはまり、ジェンダー平等の実現なしに貧困問題は解決できません。
ゴール4「質の高い教育をみんなに」に対する活動は、ゴール8「働きがいも経済成長も」の解決につながります。学校で勉強したくても生活のために働かなくてはいけない、または、学校に行く意味がないという親や周りの考えから教育を受けることを禁止されている子どもたちがいます。こういった子どもは学ぶかわりに安い賃金で悪い条件·環境のもとで働く場合が多くあります。こうして教育を受けないまま大人となると、十分な収入を得られる仕事に就くことが難しくなります。その反面、教育を受けることができれば、安定した収入のある仕事に就くチャンスにつながり、仕事で活躍する人が増えます。そのような人が増えれば、地域の経済成長にもつながります。
このように、SDGsでは、一つの目標に対する活動が、他の目標にどう影響を与えるのか、関係性を考える必要があります。
また、SDGsの17の目標は、バラバラに捉えるのではなく5つの分野に分けて考えるとイメージしやすくなります。英単語にするとすべてPから始まることから「5つのP」とも呼ばれます。一つの分野の取組みが他の分野にも影響することを考え、行動することが大切です。
SDGsを詳しく理解したいときは
SDGsが作られた経緯や世界の課題、17の目標と、その目標の具体的な内容169項目をより詳しく理解したい場合には、国連もしくは外務省のウェブサイトで確認できます。
取組みの成果を確認しながら進めるため、2017年に国連統計委員会は、SDGsの進み具合を確認する指標を作成し、公開しました。指標は全部で232あります。たとえば、貧困である人の割合や、サービスを受けることができる人の割合といったものや、目標達成を進めるための法制度があるかどうか、などの具体的なものです。国別にどのような課題をかかえ、それに対し、どのような対応が必要とされているのかを確認できます。
SDGs経営が注目される理由
SDGsが世界的にも日本でも取り組む必要があるのは、2030アジェンダならびにSDGsに込められたメッセージにある通りですが、SDGs策定時の国連事務総長は「企業はSDGsを達成する上で重要なパートナーである」と述べました。企業は、それぞれの中核的な事業を通じてこれに貢献することができると期待されているのです。よって、すべての企業に対し、その業務が与える影響を評価し、意欲的な目標を設定し、その結果を透明な形で周知するように要請しています。
この流れを受け、投資家に対しても、SDGsへの取組みを説明することが重要になってきています。特に投資家は、環境 (Environment) ·社会 (Social) ·ガバナンス (Governance) の整った企業·事業に対する積極的な投資活動を行うことが推奨されています (ESG投資) 。そのため、ESG投資の条件が揃わない場合やESGに反する事業を行う場合に投資が回収される例も出てきています。経済産業省でもSDGsを企業が取り込みESG投資を呼び込む「SDGs経営」を推進しています。
SDGsが採択されて4年が過ぎました。その間、SDGsへの理解を深めるための情報や国際的な動向、産業界の流れ、具体的な取組み、指標の目安、報告の方法について、先行事例がたくさん出てきています。
一方で、現在行なっている事業を17のアイコンに紐付けて終わる企業も少なくないようです。紐付けの作業は、事業の整理には役立ちますが、それはSDGs経営の本質を捉えてはいません。例えば、SDGsに取り組んでいるようにみえて、実際は取り組めていない場合もあります。目標間の関係性を考慮できていないことが要因の一つに考えられます。その現象は「SDGsウォッシュ」と表現されます。
企業がSDGsに取り組む際に参考となる情報源と取組みのポイントについては、次回以降でご紹介できればと思います。
公益財団法人 九州経済調査協会
調査研究部 研究主査
原口尚子