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【第2回】SDGs経営の実践に向けて役立つ情報

Last Update | 2020.07.20

SDGsの基礎知識② 九州経済調査協会

公益財団法人 九州経済調査協会
住所 : 福岡市中央区渡辺通2-1-82 電気ビル共創館5F
TEL : 092-721-4900
http://www.kerc.or.jp/index.html

 NCBと九州経済調査協会との協働でお届けする連載企画「SDGsの基礎知識」。どのようにSDGsを経営戦略に実装して、企業価値を高めるのか? その基本的な考え方や知識についてオリジナルレポートでお届けします。

 

SDGs経営に取り組むための5つのステップ

 前回のレポートでは、SDGsとは何か、企業がSDGs経営に取り組む意義についてお伝えしました (第1回)。今回はSDGs経営を実践するために、何から始めればよいのかについて、考えていきましょう。
 企業がSDGs経営を実践するとは、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。SDGsを企業の経営に取り入れていくための指針としてまとめられた『SDG Compass』 
[註1] では、取組みの段階に応じて5つのステップが示されています。今回のレポートでは、ステップごとの内容をご紹介したいと思います。なお、必ずしもこの手順で取り組まねばならないわけではありません。一方で、SDGsを上手く経営に取り入れている企業はこのステップを踏まえていることが多いので、参考にしてみてください。
[註1] 『SDG Compass』=GRI (グローバル・レポーティング・イニシアティブ) 、国連グローバル・コンパクト及びWBCSD (持続可能な開発のための世界経済⼈会議) によって共同で作成された。

(出典) 『SDG Compass』SDGsの企業行動指針ーSDGsを企業はどう活用するかーより作成

 ステップ1は、SDGsを理解することです。SDGsについて知り、企業にとってSDGsがもたらす機会や、どんな取組みが求められているのか理解を深めることが重要です。

 ステップ2は、あなたの企業ではどのような社会課題の解決に向けて重点的に取り組んでいくかを検討し、決定します。そのためには、SDGsと事業の関係を整理し、点検することが必要です。例えば製造業の会社では、自社の事業だけではなく、使っている原材料の仕入れや、製品の販売、廃棄などの各段階で、環境への負荷を強いていないか、労働者の権利は守られているかなど、様々な視点で確認を行います。そしてSDGsの観点から事業との関わりの洗い出しを行った上で、良い部分は成長・拡大させ、負の部分はどのように改善していくかを検討する必要があります。

(出典) 『SDG Compass』SDGsの企業行動指針ーSDGsを企業はどう活用するかーより作成

 ステップ3は、着目した社会課題の解決に向けて、自社として取り組む上での数値目標(いわゆるKPI)を設定することです。また、具体的な目標の設定とともに、SDGsに取り組むという会社の姿勢を社外へ公表することも、重要な情報発信となります。

 ステップ4はSDGsを経営へ統合すること、すなわちSDGsの取組みと経営を擦り合わせていく段階です。数値目標の設定にとどまらず、持続可能な目標の達成に向けた取組みを企業に定着させていく必要があります。そのためには、特定の部署だけでなく、全社的に取り組むことが重要となります。例えば、経営トップがSDGsに取り組むという意思表示をすることも効果的ですし、それを支える中間管理職の理解や、社員の主体的な取組みを促す仕組みを作ることも大切です。また、社外との協力 (パートナーシップ構築) を行うことで、活動が進めやすくなる場合もあるでしょう。

 ステップ5はSDGsについての報告とコミュニケーションを行うことです。近年は、SDGsの取組みを社内外の関係者に報告し、発信することが重視されています。SDGsは国連サミットで採択され、すでに世界の共通言語になっています。企業の取組みをSDGsの観点で整理し、成果を出していくことは、国内外を問わず、強いメッセージになります。それが、新しいビジネスチャンスにもつながります。
 これらのステップを、1回限りではなく、何度も繰り返し行っていくことが、SDGs経営の実践と言えるでしょう。

※詳しい内容については『SDG Compass』の報告書をご参照ください。

地域の中小企業にとっても重要なSDGs経営

 SDGs経営は、いわゆるグローバル企業や大手企業だけが取り組むものではなく、地域の中小企業にとっても重要です。なぜなら、SDGsは取引先の企業や投資家からも対応を求められるほか、自治体や、環境・社会に配慮した商品を好む消費者など、多くの関係者が注目し行動しているので、取り組まないことで自分の企業だけがビジネスから取り残されてしまう可能性があるからです。それが、時に「SDGsは怖い」 [註2] とも言われてしまう理由です。  [註2] 『Q&A SDGs経営』笹谷秀光著/日本経済新聞出版社 (2019)
 しかしご安心ください。SDGsの理念は、「誰一人取り残さない」社会を目指しています。SDGs経営の実践に向けて、ノウハウを共有している情報源がたくさんあります。それらを上手に活用していくことが、SDGs経営を実践していく上で有効な手段です。

SDGs経営をサポートする組織や情報源の紹介

 ここでは、企業によるSDGs経営の実践をサポートしている団体や、関連する情報源をいくつかご紹介します。企業によって、SDGs経営に向けた検討段階は様々です。まずはSDGsへの理解を深める段階の企業もあれば、すでに具体的な目標を設定して動き出しているところもあるでしょう。段階に合わせて、情報を収集してみてください。

SDGsやSDGs経営を理解するためのガイドブック

SDGs経営ガイド (経済産業省)
 経済産業省は2019年に、企業がいかにSDGs経営に取り組むべきか、投資家はどのような視点から取組みを評価するのかを「SDGs経営ガイド」として整理しました。この資料には、SDGs経営の手順や重視すべき視点が述べられているので、先ほどご紹介した『SDG Compass』と同様に、SDGs経営を考える上で参考になります。
詳細はこちら ▶︎SDGs経営ガイド(経済産業省)

九州SDGsアクションガイド (九州経済産業局)
 「九州SDGsアクションガイド」は、九州経済産業局が2019年にとりまとめたもので、九州地域のSDGs有識者によるコメントや、企業や自治体、大学によるSDGsの取組み事例が載っています。企業ごとに、取組みに至るまでの背景・経緯や取組み内容、その成果が記載されているので、あなたの会社でも取り入れられるSDGsのヒントが見つかるかもしれません。
詳細はこちら ▶︎九州SDGsアクションガイド(九州経済産業局)[PDF]

動画で学ぶSDGs

SDGs.TV (株式会社TREE)
 SDGs.TVのサイトに登録すると、SDGsに関する幅広い内容の動画を無料で見ることができます。SDGs.TVは運営する株式会社TREEによって、2016年にSDGsの普及啓発を目的に、動画配信サービスが開始されました。オリジナル動画のほかにも、国連や国連関連団体をはじめ、政府、NGO、企業など多くの組織が制作した動画が、各団体の承諾を得て掲載されています。海外の動画にも日本語字幕がついているため、気軽に視聴できます。
詳細はこちら ▶︎SDGs.TV(株式会社TREE)

情報交換のためのグループ

九州SDGs経営推進フォーラム (九州経済産業局)
 九州経済産業局は、2020年2月に九州SDGs経営推進フォーラム」を立ち上げました。フォーラムは会費無料で、SDGsに関心がある法人・団体及び個人であれば誰でも参加できます。「九州SDGs情報交流ネットワーク」では、週1回程度のメールマガジンを発信しているほか、地域・社会課題解決のためのビジネスマッチング等の事業も行っており、今後九州地域でのSDGs経営を推進していく予定です。
詳細はこちら ▶︎九州SDGs経営推進フォーラム(九州経済産業局)

北九州SDGsクラブ (北九州市)
 北九州市は、SDGsの取組み先進地区です。2018年度には内閣府の「SDGs未来都市」に選定され、2019年度には小倉北区の魚町商店街振興組合が「ジャパンSDGsアワード内閣総理大臣賞」を受賞するなど、地域全体で取組みを進めています。「北九州SDGsクラブ」は、北九州市役所と北九州商工会議所が運営している会員組織で、SDGsに関心を持っている団体・企業・個人などが自由に参加できる場を会費無料で提供しています。会員同士の情報交換や活動発表会などを通じ、SDGsの目標達成に向けた活動を後押ししています。
詳細はこちら ▶︎北九州SDGsクラブ(北九州市)

SDGsを報告・発信する際のガイドライン

SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン (国連広報センター)
 企業によっては、広報誌やホームページで、SDGsの色とりどりのアイコンやロゴなどを使う場面も増えてくるでしょう。これらを使用する際には、国連の定めるガイドラインに従う必要があります。例えば、アイコンやロゴの縦横サイズ比や色を変えること、フォントを変えることの禁止など、細かなルールがあるのでご注意ください。
詳細はこちら ▶︎SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン (国連広報センター)

 第2回レポートでは、SDGs経営の実践に向けて役立つ情報源として、その一部をご紹介しました。ただし、SDGsと事業の関係を整理する方法や、経営とのすりあわせの仕方、社内外へ取組みを報告・発信する際のポイントなどは、1つだけの正解があるわけではなく、産業分野や企業の大きさなどによっても変わってくるでしょう。今回お伝えしたいのは、「あなたの企業らしいSDGs経営」を進めていく上で参考となる情報を積極的に集め、実践していただきたいということです。
 次回は、SDGs経営を実践する上で土台となる考え方について、お伝えいたします。


公益財団法人 九州経済調査協会
調査研究部 研究員
平松朋子